BRICS首脳会議で習近平が提唱した5大イニシアチブを読み解く
2026年9月、新デリーで開催されたBRICS首脳会議第18回会合で習近平国家主席が発表した5つの協力イニシアチブと「グローバルサウス」戦略の全体像を、背景と展望を含めて解説します。
出典: thepaper.cn
2026年9月13日、インドの新デリーでBRICS首脳会議(第18回会合)の第2段階会議が開かれ、中国の習近平国家主席が「BRICS協力の基盤を固め、グローバルサウスの力を壮大にせよ」と題する重要演説を行いました。世界の多極化が加速するなか、新興国グループの結束と国際秩序への関与のあり方が改めて問われる場となり、日本を含む先進国にとっても対外経済戦略を考えるうえで見逃せない内容です。
核心内容
-
会議の概要と主要参加者:会議はインドのモディ首相が議長を務め、ロシアのプーチン大統領、南アフリカのラマポーザ大統領、イランのペゼシュキアン大統領、エジプトのシシ大統領、インドネシアのプラボウォ大統領、エチオピアのアビー首相、UAEのハリド・アブダビ皇太子らが出席。ブラジルとサウジアラビアの外相、国連のグテーレス事務総長ら国際機関のトップも参加し、「大BRICS」体制の広がりが示されました。
-
グローバルサウスへの基本姿勢:習主席は、グローバルサウスの集団的台頭が世界の多極化を推進する鍵となっていると指摘。国際情勢が混乱するなかで、BRICS諸国が歴史的主導権を握り、国際問題で「積極的・安定的・善に向かう」役割を果たすべきだと訴えました。
-
国際法治と多国間主義の擁護:主権平等、内政不干渉、紛争の平和的解決といった国際関係の基本原則を守り、国際法と国際ルールを平等に適用してダブルスタンダードを排するよう強調。国連の権威を守り、WTO改革の方向性を維持し、国際金融アーキテクチャを改革して発展途上国の代表性と発言権を高める必要性にも言及しました。
-
5大協力イニシアチブの提示:①AIオープンソースの普及(BRICS初のAIオープンソース専用区の建設、大規模言語モデル開発の支援)、②貿易投資の円滑化(BRICS特殊経済区パートナーシップ、来年のサービス貿易フォーラム開催)、③デジタル産業協力(BRICSデジタル産業クラウドプラットフォームの構築)、④スマート製造協力(スマート工場建設の支援と標準体系の整備)、⑤科学技術人材育成(BRICS技術者育成連盟の設立、青年科学技術イノベーション交流計画)が柱です。
-
中国の「第15次5カ年計画」との連動:2026年は中国の第15次5カ年計画の初年度にあたり、習主席はこれを中国自身の発展図だけでなく世界に向けた協力リストだと位置づけました。質の高い発展と高水準の対外開放を進め、「一帯一路」の質の高い共同建設を通じて各国と繁栄を分かち合う姿勢を表明しています。
会議前の集合写真と同行者:会議に先立ち、習主席は出席した各国指導者と集合写真を撮影。蔡奇氏や王毅氏らも一連の活動に参加し、中国側の外交ルートの厚みがうかがえます。
深層分析
今回の演説で最も注目すべきは、理念の表明にとどまらず、AI・デジタル・スマート製造・人材という具体的な協力分野を列挙した点です。BRICSはこれまで、新開発銀行や緊急準備基金といった金融面の制度構築が中心でしたが、今回は技術と産業の実務協力に軸足を移しつつあります。とりわけAIオープンソース専用区の提案は、米国主導の半導体・AI規制に対抗する「非西洋圏の技術エコシステム」を形成する試みと読めます。
一方で、BRICSは加盟国の利害が多様化しており、インドと中国の関係や中東諸国の思惑など、結束の実効性には不確実性も残ります。5大イニシアチブがどこまで具体化するかは、資金拠出や標準の相互承認といった運用面にかかっています。日本企業にとっては、グローバルサウス市場でのサプライチェーン再編や、デジタル標準の分岐が中長期的なリスクと機会の両方をもたらす可能性があります。
今後、2027年のサービス貿易フォーラムや技術者育成連盟の立ち上げが最初の試金石となるでしょう。中国が「第15次5カ年計画」とBRICS協力を重ね合わせ、対外開放の実績として打ち出す展開は、世界経済のブロック化をさらに促す可能性があり、注視が必要です。
よくある質問
Q. BRICSの「大BRICS」とは何を指すのですか。 A. 従来の5カ国(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)に、イラン、エジプト、エチオピア、UAE、インドネシアなどが加わった拡大後の枠組みを指します。今回の会議にはパートナー国や招待国の代表も参加し、グローバルサウスの受け皿としての性格が強まっています。
Q. 5大イニシアチブは日本経済に影響しますか。 A. 直接的な影響は限定的ですが、AIやデジタルの標準がBRICS圏で独自に形成されれば、日本企業が新興国市場で採用される技術規格への対応を迫られる可能性があります。サプライチェーンの分散と標準の分岐は、中長期の経営判断材料になるでしょう。
Q. 中国の「第15次5カ年計画」とBRICSはどう関係しますか。 A. 中国は自国の発展計画を対外協力のリストとして提示し、BRICSをその実践の場と位置づけています。国内の産業高度化と対外開放を連動させることで、グローバルサウスにおける影響力を制度的に固めようとする狙いが読み取れます。
参考 URL: https://www.thepaper.cn/newsDetail_forward_34061035
関連記事

コカ・コーラ、北米需要低迷にもかかわらず3四半期連続で業績見通しを上方修正
インフレと経済不安の影響下で北米市場の消費動向は鈍化していますが、コカ・コーラはグローバルな成長とブランドの強化により、3四半期連続で業績見通しを引き上げました。

セルビア議会選挙、学生運動が圧勝 政権交代の波紋
セルビアで行われた議会選挙で、学生団体が主導する「学生リスト-学生勝利」が圧勝。52.71%の得票率を獲得し、議会の過半数を掌握。現政権交代の可能性が高まる。

国連警鐘:紛争で深刻な被害を受けた子供が過去最多の2万4000人超
国連が発表した最新報告によると、2025年に紛争で深刻な被害を受けた子供の数が過去最高の2万4000人を超え、その内70%以上が爆発物による被害を受けています。AI兵器の普及が新たな課題に。

ドルジェネラル、広告価格より高く消費者に請求 FTCと20州が提訴
米連邦取引委員会(FTC)と20の州が、小売業者ドルジェネラルが広告表示価格より高く消費者に請求したとして提訴。株価は4%下落し、脆弱な消費者から数百万ドルの不当な料金を徴収したと主張。

ジェットブルー、燃料費高騰で赤字拡大も収益改善の兆し CEOが「長期的に好調」を強調
燃料費高騰が響く中、ジェットブルーは需要の強さを武器に収益改善の道筋を示した。再編計画と提携戦略が機能し始めている。

AI大手アンソロピック、史上最大級のIPO申請—1.5兆ドル超評価額が市場に与える影響
AI企業アンソロピックが史上最大級のIPOを申請。1.5兆ドル超の評価額はスペースXに匹敵し、AI市場に大きな波紋を広げるでしょう。

中比外交の新たな絆:雌パンダ「冉冉(ジャンジャン)」がベルギーへ
ベルギーでのパンダ保護協力プロジェクトを継続するため、中国から雌パンダ「冉冉」が派遣されることが決定。2026年9月の新協定に基づく今回の交流は、両国の関係深化と生物多様性保護への貢献を象徴する重要な出来事です。

利剣演習で初投入、日本陸自の「25式」対艦ミサイルが実戦配備の意思を示す
日米合同軍事演習「利剣27」で、日本陸上自衛隊が新型対艦ミサイル「25式」を初めて公開。射程1000キロの遠距離攻撃能力を示唆し、地域の安全保障情勢が緊張を高めている。