大疆、宇樹科技への投資撤退で250億円の逸失か 内部腐敗防止策の代償
2018年に大疆創新が宇樹科技へ約1013万元を投資したが、2019年の内部腐敗調査で撤退。上場初日の株価上昇で、その投資価値は250億元超に。内部統制と投資判断のジレンマを考察。
2026年8月19日、中国の人型ロボット企業「宇樹科技」が上海証券取引所の科創板(STAR Market)に上場し、初日の株価は発行価格の約7.3倍となる1100元で取引を開始しました。時価総額は一時7000億元を超え、「人型ロボット第一株」として大きな注目を集めています。しかし、この上場の裏で、中国のドローン大手「大疆創新(DJI)」がかつて宇樹科技への投資を見送った歴史が再び脚光を浴びています。もし投資を継続していたら、そのリターンは250億元(約5200億円)に達していた可能性があると言われ、内部腐敗防止策がもたらした「機会損失」として議論を呼んでいます。
核心内容
- 大疆の投資と撤退の経緯:2018年、大疆は自社ファンドを通じて宇樹科技に約1012万8600元(当時153万ドル)を出資し、約17%の株式を取得しました。しかし、2019年4月に突然全額減資し、株主名簿から姿を消しました。
- 上場で明らかになった逸失利益:宇樹科技の上場時の発行価格(150.8元/株)で計算すると、大疆の持ち分は約37億元に相当します。初日の終値ベースでは250億元を超える計算になり、投資額の約2470倍ものリターンを逃したことになります。
- 創業者・王興興氏の経歴:宇樹科技の創業者である王興興氏は、大疆に約2ヶ月間勤務した後、2016年に退職して宇樹科技を設立しました。在職中に開発した四足歩行ロボットの試作機「XDog」がきっかけで起業を決意したと言います。
- 内部腐敗調査の影響:2019年、大疆は社内で大規模な腐敗調査を実施し、45人の従業員が処分され、16人が司法当局に送致されました。この調査の影響で投資部門の業務が停滞し、すべての対外投資プロジェクトが停止されたと報じられています。
- 他の投資機会も逃す:大疆は同じ時期に、元チーフサイエンティストが設立した農業ロボット企業「豊疆智能」からも撤退。同社は現在香港IPOを目指しており、大疆が保有していた20%の株式は理論上約7.9億元の価値になっていたと試算されています。
- 宇樹科技のその後の成長:大疆撤退後、宇樹科技は多くの投資家から資金調達に成功。2025年には評価額127億元に達し、上場前の最終ラウンドではテンセントやアリババなどの大手も出資しました。
- 上場後の業績懸念:宇樹科技の2026年第1四半期の純利益(非GAAP)は前年同期比で52.55%減少しており、成長の鈍化が指摘されています。

深層分析
大疆の宇樹科技への投資撤退は、単なる投資判断の誤りではなく、企業統治と内部統制の難しさを浮き彫りにしています。2019年の腐敗調査は、サプライチェーンや投資部門に蔓延していた不正を正すために実施されましたが、その過程で投資案件がすべて停止され、結果的に有望なスタートアップへの投資機会を失いました。これは「過剰な内部統制」がイノベーションを阻害する典型的な例と言えます。
また、大疆は宇樹科技だけでなく、豊疆智能など元社員が創業した複数の企業からも撤退しており、「大疆系」スタートアップとの関係が断たれました。創業者の汪滔氏は後に「腐敗防止自体は間違っていなかったが、方法が間違っていた」と認めており、内部統制と成長投資のバランスの重要性を示しています。
一方で、宇樹科技の上場は、中国のロボット産業の急成長を象徴する出来事です。政府の後押しもあり、人型ロボット市場は今後数年間で急速に拡大すると予想されています。しかし、同社の業績は減速傾向にあり、上場後の株価が企業価値を適正に反映しているかは疑問が残ります。大疆の「逃した魚」は、今後の中国テック業界における企業統治の在り方を問いかけるとともに、投資のタイミングとリスク管理の難しさを再認識させます。
よくある質問
Q: 大疆はなぜ宇樹科技への投資を撤退したのですか? A: 公式な理由は明らかにされていませんが、2019年の内部腐敗調査の影響で投資部門が機能停止し、すべての投資案件が見直されたためと報じられています。投資担当者が調査に巻き込まれた可能性も指摘されています。
Q: 宇樹科技の今後の見通しは? A: 人型ロボット市場の成長に伴い、中長期的な需要は拡大すると見られていますが、2026年第1四半期の純利益が半減するなど、短期的な業績は不安定です。競争も激化しており、製品の差別化と収益性の改善が課題です。
Q: 大疆の撤退は投資家にとってどのような教訓を与えますか? A: 内部統制と成長投資のバランスの重要性を示しています。過度なリスク回避は機会損失を生む一方、不十分な統制は不正を招くため、適切なガバナンス体制の構築が不可欠です。
参考 URL: https://www.163.com/money/article/L4MRRF7500258105.html
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